オペラの愉しみⅡ「オペラにおける男女の愛の貌(かたち)」

9月例会開催報告

Ⅰ テーマ: オペラの愉しみⅡ「オペラにおける男女の愛の貌(かたち)」

Ⅱ 日時:2018年9月12日  場所:県民センター705 参加者:22

Ⅲ 講師: 安場(やすば)良治氏

Ⅳ 講演内容:

 1 序説

  前回は「オペラの愉しみⅠ」と題しての公演であったが、オペラの歴史全体を眺めての説明だったので、やや総花的になった。今回はテーマを「オペラにおける男女の愛の貌(かたち)」ということに絞った。オペラのテーマは殆どが男女の恋愛で、そうでないテーマのオペラを探すのが難しいくらいである。

今日はその中で、モーツアルトの「ドン・ジョバンニ」とヴェルディの「アイーダ」を取り上げる。

 2 作品解説

(1)  モーツアルト「ドン・ジョバンニ」

 「ドン・ジョバンニ」はフランス革命1789年の2年前に作曲されたもので、その時代の空気を反映したものになっている。原作は、ティルソ・デ・モリーナというカトリック僧の書いた「石像の賓客」というものだが、これは不道徳な行動を行ったものは神の怒りにふれて地獄に落とされるという教訓劇だったが、それが「神を恐れぬ快男児の冒険談」に変質した。台本は「フィガロの結婚」、「コシ・ファン・トゥッテ」も書いたロレンツォ・ダ・ポンテの作で、スペインのドン・ファン伝説をもとにイタリア語台本を作成。会う女性を悉く誘惑しては捨ててきたドン・ジョバンニが最後に天罰を受ける物語である。ストーリーが殺人を含むというやや深刻な面を持っており、オペラ・ブッファ(喜歌劇)的な明るい特徴を備えながら、激しい情念と悪魔的な戦慄といったオペラ・セリア(正歌劇)的な悲劇的な面を持っているため、モーツアルトはドラマ・ジョコーソ(諧謔劇)と呼んだ。

序曲

1幕 第1場 騎士長の屋敷の中庭

     第2場 宿屋の近くの街路  レポレッロのカタログの歌・・・ブッファ的な歌

     第3場 村の広場 手と手を取り合い・・・誘惑の二重奏

          シャンパンの唄・・・ドン・ジョバンニが生を謳歌

     第4場 ドン・ジョバンニ邸の庭先  ぶってぶってマゼット・・・ツェルリーナの可憐な歌

          オペラ・ブッファからオペラ・セリアの移り変わりあり。

     第5場 ドン・ジョバンニ邸の広間   舞台上の演奏者とオーケストラの違う音楽を重ねる独創性 第2幕  第1場 路上   薬屋の歌        

    第2場 ドンナ・アンナ邸の暗い前庭

      第3場 墓地   殺された騎士長の銅像がうなずく

      第4場 ドンナ・アンナ邸の暗い一室

      第5場 ドン・ジョバンニ邸の広場  地獄落ちの迫真性 

紹介された映像は、195410月のザルツブルグ音楽祭におけるライブの収録で、フルトヴェングラー指揮のDVDを鑑賞した。かなり古い収録だが、音質、画質とも気になるほどのことはなく、十分鑑賞できた。チェーザレ・シェピのかっこいいドン・ジョバンニ、リーザ・デラ・カーザのドンナ・エルヴィーラなど最高の歌手と素晴らしい演奏で圧倒された。

(2) ヴェルディ「アイーダ」

エジプトの発掘の際に通例ではみられない、男女の白骨死体が一緒に埋葬されているのに出会った考古学者が、そこから想像力を生かして作ったフィクションが原作となった。

ヴェルディは、元歌手、劇作家、音楽誌編集長のアントーニオ・ギスランツォーニを台本作者に選び、共同作業によって、壮麗かつ精妙なオペラを作り上げた。

この曲は1869年スエズ運河開通記念に建てられたカイロの歌劇場のこけら落とし用の曲で、1871年に完成した古代エジプトを題材にした作品である。

エジプトとエチオピアの戦争のさなかのエジプトの若き将軍ラダメスと彼が慕うエチオピアの王女で捕虜のアイーダとの恋に、ラダメスを慕うエジプト王女アムネリスが絡む悲恋物語。凱旋の場のスペクタクルな効果から、ラダメスへの愛と祖国への愛の相克に悩むアイーダの「勝ちて帰れ」に至る心理描写まで、ドラマの様々な要素を盛り込んだ作品である。

古代エジプトを舞台に繰り広げられる異国情緒豊かな祭儀や舞踏、「凱旋の場」などの豪華絢爛な場面があり、作品の成立動機やその祝典的性格から、音楽祭の出し物やオペラ・シーズンの幕開けの演目として取り上げられることが多い。  

    第1幕第1場  メンフィスの王宮の広間

          「勝ちて帰れ」・・・征討軍の総大将ラダメスを激励する

       第2場  火の神の神殿

    第2幕第1場  アムネリスの私室

       第2場 テーベ城門

          「凱旋行進曲」・・・壮麗で有名な旋律

    第3幕  ナイル川岸、イシスの神殿の前

          「わが故郷」・・・アイーダの望郷の思いの曲

    第4幕第1場  王宮の一室

         第2場  火の神の神殿と地下牢

 こちらのDVDは、1985年にミラノ・スカラ座で行われたライブを収録したもので、ラダメス役のルチアーノ・パヴァロッティが圧巻の歌を聞かせてくれた。

アイーダ役のマリア・キアーラ、アムネリス役のゲーナ・ディミトローヴァも好演で見ごたえがある。

3 結び

 資料に記載されている通り、18世紀の意外に自由でリアルな恋愛観から、19世紀ロマン主義以降のキリスト教的道徳観による一夫一婦制を基にした純愛をささげる恋愛観への変化を背景に、今回は、代表オペラ2曲を選び、恋愛表現を比べることになった。

演者安場氏の見識と博識に基づいた、分かり易い解説のお陰で、第一級の演奏を一層楽しむことができた。貴重な講演のお陰で、間違いなくオペラの愉しみが増したことに、お礼を申し上げると共に、次回の講演を楽しみに待ちたい。    

(記 種田 守)                           


by yoshu8407 | 2018-11-04 11:38 | 例会報告 | Comments(0)